少女は成長して、恋愛をする年代となりました。
「自分はどうやったら男の子の気を引く事が出来るか知ってるの」と自信たっぷりです。
学校で一緒に学んでいる友人達に、少女はいつもこう言っていました。
「恋する秘訣は彼をたくさん愛してあげて、もっと素敵な女の子になって彼を満足させること」
「そしたら、彼はあなたの事が好きになってひとりでは生きていられなくなるのよ」
彼女はその通りに実行して、やがて見つけたお気に入りの男の子を愛するようになりました。
男の子が使っているロッカーへ手紙を入れたり、野球の練習がある時も応援しに行きました。
彼へ掛ける言葉はいつも「あなたはとてもステキよ」というものでした。
このようにして、少女は少年を心の底から愛して愛し尽くしていったのです。
そうするうちに彼も自分の心の中でこんな風に感じるようになっていったのです。
「ボクの事をこんなにまで愛してくれるのはこれまで誰一人としていなかった」
「パパやママでさえこんなに愛してはくれない。ボクはあの子の事を愛しているみたいだ」
ほんの少しの間少女はとても幸せでした。
・「私にとって彼はプリンス、彼にとって私はプリンセスなんだわ」と感じていたのです。
しかし、時が経つに連れて好きな人がいても幸せでないということに気付きだしました。
そう、いくら王子様みたいに扱っていても彼からはお姫様扱いされていないことにです。
少女は自分の部屋のベッドで泣き崩れ、次のように考え始めました。
・「自分が深く愛しているのに、彼からは同じように愛してもらえない」
「彼の為に色んな事をしているのに….どうしてなのかしら」彼女は事態を飲み込めません。
数年後、大人になった彼女は物事を考えて恋をしたり結婚をする年代へとなりました。
ですが、細かい部分については違ってもストーリーの内容は変わらないままです。
彼を離さないよう魅力的な面を持ち愛情に満ちた女性となる為、彼女は努力を重ねていきました。
ロッカーへ手紙を入れないようになり、気を利かせたカードやポエム、贈り物をするようになりました。
彼をびっくりさせる為のサプライズパーティーを開いたり、助言をしたりしていったのです。
こうして、彼女は彼にとって大切な存在となり、それは相手が変わっても繰り返されていきました。
ところが、彼女は自分ばかりが与えるだけで、相手から与えられていないことに気付いたのです。
自分からしなければ相手も何もしてくれない、一緒にいても孤独なのだと気付き始めたのです。
しばらくすると、彼は彼女へ次のように打ち明けたのでした。
「君は僕を愛してくれてはいるけれど、僕は同じように君の事を愛してはいないと思うんだ」
結局二人は別れてしまい、彼女は部屋へと駆け込んでベッドに泣き伏せました。
・「どういうこと?何でこう何度も私ばかりこんな目にあってしまうのかしら?」
「この世の中で最も優しい女性になる為に一生懸命頑張って努力してきたのに…」
「私自身が愛していくのと同じように私のことを愛してくれる相手がなぜ見つからないの?」
<自分自身が考えているほど、相手に思われない理由って?>
この話の主人公は、女性心理学博士自身であり、彼女の体験談です。
ほとんどの女性に見られるように、彼女自身も男性に愛される為の努力を惜しみませんでした。
相手の男性へ与える愛が全てなのだと考えていて、皮肉な事にそうすることが上手だったのです。
彼女は好きな男性へ溢れんばかりの愛情を与え、同じ様に彼も愛してくれると感じていました。
しかし、現状は彼女が与えているものだけを相手の男性は愛してくれているだけだったのです。
だからこそ、彼に心から愛されていないのだと感じていても何の不思議もありませんでした。
自ら別れを言った時も、相手に利用された、騙されていたと感じても不思議ではありませんでした。
相手に愛されるよりもっと愛した結果、‘理想と違う男性’を好きになってしまったという事でした。
どれくらい愛されているのかという事に気を取られ、愛しているかを考えてなかったといいます。
‘自分に合った女性’と思っているか心配で、‘自分に合った男性’かを考えていなかったのです。
愛していたとしても好きになれない、仲良く出来ない‘違った男性’と付き合ってしまったのです。
なぜなら、自身が相手の男性をどんな風に思っているのか注視していなかったからです。
相手の男性にも自分をどんな風に思っているのか考慮する機会をあげていなかったのです。
好きな男性に自分をアピールするのに必死で彼が自分を欲しがる隙さえ与えなかったのです。
彼女の心の中には‘父親に見捨てられてしまった私’がずっと住み続けていました。
‘自分だったら’というだけで相手の男性が‘自分’と共にいたいと思うことが信じられませんでした。
少女は、男性に写る自分が利用できる女性に見られたい為に必死で努力をしてきました。
彼が‘彼女の事がとても必要だ。ひとりじゃとてもいられない’と思ってくれると考えたからです。